セーブライオンズの帽子
5歳ぐらいの頃の出来事です。
5階建ての団地に住んでいて僕の家は一階。
団地には同級生ぐらいの子供たちも沢山住んでいました。
その中でも仲が良かったのが二階に住んでいる洋君。
一学年上の幼なじみ。
洋君は虫好きでよく虫取りに一緒に出掛けていました。
ある夏の日、今日も虫取りに出かけた時の事でした。
今日は僕の兄とその友達で5階に住んでいるゆうすけ君も一緒に虫取りに出かけることになります。
夏のものすごく暑い日でした。
暑いけど帽子をかぶっていなかった僕に優しいゆうすけ君が「貸してやるよ。暑いから。かぶっとき」
ありがとうゆうすけ君。
そしていつも虫取りに行く道中にある「ねむの木橋」を渡ります。
ゆうすけ君と兄は「先にお菓子屋さんに行ってから虫取りに行くから!寄りせんとまっすぐ山に行くんやで。」といって僕たちと別れました。
そして洋君と二人で山に向かったのです。
向かう道中。
近所のたーくんがやってきて僕の帽子を取り上げました。
たーくんやめてくれよ!返して!
たーくんは僕より5つも年上なので力ではかないません。
結局たーくんに帽子を取り上げられてしまいました。
悔しかった僕と洋君は二人で泣きながら歩いて仕方なく山に向かいます。
すると前からハット帽をかぶったおじさんがこっちに歩いて僕に声を掛けます。
「どうしたんや?僕?」
帽子がとられたから。あれはゆうすけ君が僕に貸してくれたやつなんや。
「誰にとられたんや?」とおじさんがやさしい笑顔で僕の頭に手をやりました。
おじさんは僕と洋君の手を引き「買ってあげるよ。おじさんについておいで」
おじさんは優しそうな笑顔でそう言います。
そして近所のスーパーまで買いに行くことになりました。